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介護福祉の稼働率を向上させる(特別編)

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

新型コロナがもたらした甚大な影響、介護ニーズの変化

  • 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえてお伝えする。
  • 今回は、緊急事態宣言の解除を受けて、オペレーション再構築にどう取り組むかを緊急レポートする。

新型コロナがもたらした甚大な影響

新型コロナウイルス対策としての緊急事態宣言が5月に解除され、介護事業所においても自粛明けの運営体制について取り組みを本格化させねばならない時期がきている。

一時期は900近い事業所が休業となる(2020/4/21NHK調査)など、影響は甚大だった。

特にデイサービス、デイケアといった通所型サービスについては、利用控えによる集客の落ち込み、中止キャンセルの増加が大きく、自粛明けの対策は急務だ。

とはいえ、各事業所では、今もって非常に難しい対応、選択を迫られ、ご苦労の日々が続いていることと想像する。

高齢者の集まる介護サービスはウィルスに対して無防備で、感染予防といっても一度入り込まれてしまっては、それを防ぎきる事は困難である。

そのような状況でも感染拡大を防いでいくためには、外部からの流入をシャットアウトするしかない。

つまり、営業活動を自粛し、新規利用の受け入れもよほどの事情がない限りはお断りをする形で、外部からの人の流れを絶つしかないのが現状と言える。

前年同月比売上20%減も珍しくない

そのような状況もあってか、不景気に強いと言われる介護事業所運営であっても、サービスによっては前年同月比−10%、-20%、というような売上の落ち込みも珍しくないとのこと。

利益率10%未満が大半を占める介護事業運営において、致命的とも言える数字だ。

介護サービス利用自粛のムードが少しずつ緩和されつつあるとはいえ、新型コロナウイルス流入の際のリスクが高いことには変わりなく、感染流行前のような運営に即座に戻ることができるかといえば、今後も困難が続くという見方が大方の予想だ。

そのような中で、私たちは営業活動を改めてどのように理解し、何から取り組み、どのような成果を上げていくべきなのだろうか。

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機能を最大限に活用し、地域のニーズに応えていく

まず、現在の状況を冷静に整理してみる。

介護サービスの利用控えが続いていたとはいえ、地域における介護ニーズが減ったわけではない

むしろ外出自粛の結果として、高齢者の介護ニーズ、特にリハビリのニーズの高まりが生じている。

1ヵ月、2ヶ月と外出を控える中で、身体機能の低下が見られるばかりか、認知機能の低下が進んだような報告もあるようだ。

ある都市圏の市町村においては、通所介護の休業要請によりサービスの利用を控えた21人の追跡調査を行った結果、身体機能もしくは認知機能のいずれかの能力が以前よりも低下した方が6割にあたる13人にもなったとのことだ。

つまり、感染症予防という難しいテーマは継続しているものの、同時に地域高齢者はかつてないほど介護サービスを必要としていて、介護事業所は今こそその機能を最大限に活用し、地域の困りごとを解決することに貢献していく取り組みを行わなければならない立場でもあるということだ。

ということは、地域に向けて今こそ営業活動を強化し、地域で困っている方を、介護サービスを通じて支えていかなければならないと言えるのである。

まずは事業所の受入れ上限を見極める

では具体的に、どのような取り組みを行っていくべきなのだろうか。

まず、改めて自粛明けの今こそ、自事業所の受入れ上限を見極めなければならないだろう。

従来通り定員いっぱいまで受けることが可能なのか。何人だったら安全に受け入れられるのか。

ソーシャルディスタンスの確保が難しいのであれば、どのような工夫でそれを乗り越えることができるのか。

食堂の席の配置の工夫は、ビニールシートを貼ることで安全加工ができる部分はあるのか、などだ。

いずれにせよ、今だからこそ完全に引き受けられる上限を把握し、そこに至るまであと何人集客ができるのかというのを明確にしておくべきだろう。

その上で、管理者や相談員、営業担当者は、今だからこそ地域に出て、特にケアマネジャーとのコミュニケーションを密に取ることを心がけるべきだろう。


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介護ニーズに変化が生じたという、山のような相談

ケアマネには今まさに、自粛明けで介護ニーズに変化が生じたという相談が山のように寄せられている

介護事業者には、これらの手助けをしていかなければならない責務がある。

自施設のサービスを必要とされているのであれば積極的に受け入れていく必要があるし、必要なサービスが異なっていても、受け入れ先を一緒に探すというような手助けが求められているのだ。

これらのコミュニケーションは、もちろん直接お会いしなければできないものではない。

このシリーズで伝えているように、普段から地域の窓口の方との深い関係づくりに努めていれば、今は電話1本入れるだけで地域の状況に関わる情報交換をできるはずだ。

介護サービスに求められている相談は、会話の中で自然と上がってくる。

つまり営業活動としてではなく、まずは地域の情報収集をする目的として、連絡のしやすい先から順にコミュニケーションを取っていくという姿勢が求められるのだ。

新型コロナウイルスの流行により、世界中の人々が新しい生活様式を模索しなければならない状況となったが、介護サービスを取り巻く環境が大きく変わり、もしかしたら従来通りの運営手法が通用しないということも起るかもしれない。

今こそ新しい介護サービスのあり方を考え、新しい営業活動についても模索しながら、今だからこそ地域で求められている高齢者ニーズに応えられるサービスを目指していくべきだろう。

レポートの執筆者

沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント

株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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